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飛騨信用組合のキャッシュレス決済の取組み

地域金融機関は金利の低下や人口減少などを背景に、収益機会は縮小傾向にある。

一方で、金融機関によっては生き残りをかけて先進的な取組みを行う金融機関も存在する。

今回は、キャッシュレス決済を起点に面白い取り組みを行う飛騨信用組合を紹介したい。

飛騨信用組合の概要

岐阜県の観光地である飛騨・高山地域を拠点とする信用組合

信用組合とは、銀行と同じく預金・貸出業務を行う金融機関であるが、顧客(組合員)になるには企業規模が一定水準より小さいことや、所在地が信用組合と同じ地域であることなど、条件が設けられている。つまり、特定地域の事業者や住人(組合員)の間で、信用組合という組織を通じて、資金を融通しあうことを目的としている。

・業績について、企業規模をみると、預金は2,509億円と過去3年で7%増、貸出金は1,108億円と同じく過去3年で14%増と近年は業容を拡大しているほか、業績についても、継続的な収益力を示す経常利益でみると、近年は10億円前後で安定水位している。また、経営の安全性を示す自己資本比率で見ると、金融庁の示す基準である4%の4倍近くの16.31%を確保している。

 

さるぼぼコインについて

(概要)

飛騨信用組合が金融機関として初めて運用する二次元コード決済の電子地域通貨である。

・導入目的として、飛騨・高山地域では、他の地域と同様、地元の人が地域外で消費をするようになり、地元の企業の収益機会が減少していた。そこで、地元の人が地元で消費できる仕組みとして、利用を地域に限定した電子地域通貨を導入した。

・システム基盤として、東京のITベンチャー、アイリッジが開発した「MoneyEasy(マネーイージー)」という電子地域通貨プラットホームを採用している。

・2017年12月からスタートしており、2018年8月時点で飛騨・高山地域の700の事業者で利用可能。同地域の企業数が6,073社なので、1割超で利用が見られている。また、さるぼぼコインの利用対象となりうる小売など消費産業でみると事業者数は1、709社なので、利用率は4割超と普及がかなり進んでいる。

(仕組み)

・利用者はスマホに「さるぼぼコイン」のアプリをダウンロードし、飛騨信用組合の本支店で、1円=1コインとしてチャージができる。

・店舗はQRコードを店内に掲示し、利用者はスマホ二次元コードを読み込み、金額をスマホに打ち込むだけで決済が完了する。

・店舗側のメリットとして、クレジットカード決済で必要となる専用の読取り端末が不要であり導入費用が発生しないほか、店舗が飛騨信用組合に支払う決済手数料は無料

・店舗は、支払いに使われたコインを預金口座に換金して入金できるほか、他の加盟店への送金にも利用することができる。

・ただし、コインを現金に換金する際に手数料が発生する他(払戻額の1割プラス500円)、他口座に送金する際には手数料が発生する。

・さるぼぼコインを導入できる店舗は、飛騨信用組合の営業エリアである高山市飛騨市、白川村に限られる

・アプリには、加盟店の店舗情報やGPS機能を活用した地図の店舗案内も掲載されている。

・普及に向けて飛騨信組ではチャージ額に1%のプレミアムを付与するほか、3月にはチャージ額の上限を10万円から200万円にアップし、BtoB(企業間取引)にも利用しやすいようにする。

 

 

Alipayアクワイア

飛騨信用組合は、2018年8月に、中国のアント フィナンシャル サービスグループが提供するモバイルおよびオンライン決済(QR決済)プラットフォーム「Alipay(支付宝:アリペイ)」 のアクワイアラ(加盟店開拓会社)として、加盟店の獲得と業務フォローを行うことを発表した。

・目的は、中国で広く普及する決済手段であるQR決済が利用できる環境を整備・推進し、地元企業の収益機会を増やすことで地域活性化を図ること。

・加盟店を増やし、「さるぼぼコイン」とAlipayの両決済が利用できるQR コードスタンドを、同地の店舗や観光施設などに設置する。

 

私見

QRコード決済を起点として、①地域通貨による地産地消の推進、②中国人観光客の消費促進といった取り組みは大変面白い。

・一方で課題も多いと見られる。①については、確かに利用が地域で限定されている地域通貨であれば、地域で消費をせざるを得ないが、あえて利用地域が限定されている地域通貨よりも現金を決済手段として保有するのが消費者心理ではないだろうか。むしろ、地元住民のQRコード決済比率を高める方向だけでなく、地域外の観光客もQRコード決済が可能になる仕組み作りを行い、地域通貨の決済高を増やすことを考えるべきではないか。

②については、確かに店舗提示によるQRコード決済は便利で店舗側の負担は少ないものの、①QRコートに偽のコードを貼り付けるといった不正の発生、②利用者が決済を行ったか、利用者のアプリを提示してもらい視認する必要があるが、仮に店舗来店者が多数の時は正確に店舗店員が確認できるか、といった問題に対応する必要がある。いずれも人手の問題であり、仮に中国人観光客が増加したときに対応できるだけの人員を確保できるか、といった課題に対応する必要がある。