景気後退ってなにで確認したらいいのか?今どうなってるの?
→2四半期連続でGDP成長率がマイナスになると、景気後退
→ 足元はどうかと言えば、世界のGDP二大強国である米中の貿易戦争が昨年から世界景気の足を引っ張っており、貿易量減少→設備投資減少→企業業績悪化となっている。ただ、業績悪化は製造業中心で、非製造業はそこまで悪くない状況なので、GDPの大半を占める内需が腰折れしているわけではない。株価も最高値を伺う水準まで持ち直してきている。
→GDPの直近の予測としては、日本経済研究センターが11月12日に公表した民間エコノミストによる経済見通し「ESPフォーキャスト」の11月調査では、2019年7~9月期の実質国内総生産(GDP)成長率の予測平均は前期比年率で0.80%増だった。
→この予測によると、日本経済は10~12月期にマイナス成長に転じた後、20年1~3月期にはプラスに戻る見通しなので、足元は景気が一旦の足踏み状況といえるが、本格的な景気後退とまではいえない。
→全てはトランプと習近平の御心次第だが、本格的な対立で世界経済を貶めるのは彼らの本意ではないので、彼らのアクションをきっかけとした景気後退はないと思う。
生産性の低い中小企業は市場から退出しないといけないのか?
以前からある議論ですが、生産性低い中小企業が日本経済の足を引っ張ってるというものです。
https://www.google.co.jp/amp/s/diamond.jp/articles/amp/217560
クラウドサービスの時代ですから、バックオフィスの効率化は過去と比べてはるかにやり易くなっていますし、人にしかできないことでどれだけ付加価値を出せるかに注力することが必要だと思います。
ただ、いわゆる生産性の分子であるGDPで付加価値は図れるかという問題はあると思います。算出妥当性はもちろん金銭価値で図ることが妥当なのかなと、、、
「ロバート・ケネディは半世紀前、国民総生産(GDP)が「人生を意味あるものにしてくれるもの」をまったく測ることはできないことは遺憾だとの意を示した」
https://www.google.co.jp/amp/s/toyokeizai.net/articles/amp/141288
GDPでみても、人口減少高齢化社会では生産性が上がっても労働投入量が減れば縮小せざるをえませんが、人口減少を上回る生産性の伸びってどれだけなんですかね。賃金引上げ→消費増加って必ずしもつながらないと思いますし、、、
https://www.dhbr.net/articles/-/4886
いずれにしろ、あやふやな生産性という議論で、中小企業が日本経済の足を引っ張ってるとの主張は論理的に破綻してます。
今日の確認したい日経記事(2019/4/16)
成長企業、データで目利き みずほ銀、中小にオンライン融資 ECやSNSの履歴活用
(要約すると)
・中小企業が銀行融資を受ける場合、決算書や銀行の営業担当者による経営者からのヒアリング内容が融資の可否を決める材料となり、申し込みから融資実行まで時間がかかるといった問題が発生していた。また、担保や保証が信用の補完となり、これらがなければ、そもそも融資が受けれない中小企業も多い。
・このような状況に対し、オンライン銀行などが非決算の情報に基づき融資を行うオンライン融資を展開してきた。早い場合は即日入金も可能である。
・非決算の情報とは、銀行口座の出入金の履歴、会計ソフトを通じた売掛金の情報、ECサイトでの受注状況、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に集まる口コミの評判などである。
・みずほ銀行も5月からオンライン融資を開始し、同行に口座を保有する約80万社の中小企業のうち、融資取引がない9割の先の融資開拓を進める。
・世界のオンライン融資市場は2023年に約41兆円と、2018年比で8割超増加する見通しである。
(私見)
・オンライン融資は高金利であり、銀行にとっては収益貢献が期待されるほか、事業者にとっても短期資金の調達を円滑に行うことで、資金繰りの改善を行うことができ、経済にプラスの効果をもたらすと言える。
・一方で、オンライン融資の資金使途は、運転資金など短期資金であり、企業の成長資金など長期資金ではない。
・オンライン融資により、銀行が対応できなかった隙間市場が埋められるということである。
・事業の成長性を評価し、伴走型で長期資金を融通する銀行な役割は依然重要である
今日の確認したい日経記事(2019/4/14)
教育×AI=個別指導が進化 Z会や学研系、集団塾が苦境 つまずきを分析 遡って教え直す
(要約すると)
・国内の教育市場は伸び悩んでおり、近年は2.5兆円近辺で推移しているほか、少子化もあり小学生の学習塾の利用者は320万人と過去8年で約45万人減少している。
・学習塾は、受講生の減少を受けて従来の集団指導を維持することが困難になっている。
・このため、大手学習塾は個別指導に事業領域を拡大しており、その際、個人に併せたオーダーメイド型の教育を提供するため、AIの活用を進めている。
・大手学習塾は自社リソースではAIの活用に対応できないことから、スタートアップ企業と提携して教材を開発している。
・例えば、Z会はスタートアップのアタマプラスと提携し、過去の生徒の問題の正誤や解答時間のデータを分析し、つまづいた問題からどの学習項目が理解できていないかAIが特定し、遡って教えることが可能な教材を開発、提供している。
・このような教育と情報技術を掛け合わせたエドテック市場は、2024年度には2017年度比で8割増の3,062億円に拡大する見通しである。
(私見)
・スマホが普及している現在において、場所を超えて手元で優秀な教師の動画や教材にアクセスできる環境下において、生徒が通学する学習塾の必要性は低下していると言える。
・学習塾のビジネスモデルとしては、①優秀な教師による授業の配信、②オーダーメイドの学習教材の提供、に絞られるのではないか。
・学習方法の進化に伴い、学習効率の飛躍的な向上が期待されるため、過去に問題視された詰め込み教育の逆で、学習領域の拡大(プログラミング、語学など)が行われるのではないか。
・新世代にキャッチアップするため、旧世代の再教育の必要性も高まると見られる。
今日の確認したいウォール・ストリート・ジャーナル記事(2019/4/14)
Publicis Nears Deal to Buy Alliance Data’s Epsilon Unit for About $4.5 Billion(フランスの広告大手であるPublicisは、米国のマーケティング大手のAlliance Dataからデジタルマーケティング部門を買収)
・フランスの広告大手であるPublicisは、米国のマーケティング大手のAlliance Dataからデジタルマーケティング部門であるEpsilonを45億ドルで買収する。
・Publicisの狙いは、Eplisonが保有するデジタルマーケティングのノウハウを取り入れることで、同社の既存のTV広告や印刷広告に依存したビジネスモデルを変革することにある。
・アルファベットやフェイスブックなど、デジタル広告の台頭に加えて、企業のインハウスでのデジタルマーケティングを支援するアクセンチュアなど新興勢力により、Publicisの従来型広告による収益機会は脅かされていた。
中国のキャッシュレス決済
・中国ではQR決済を含んだキャッシュレス決済が普及しており、決済に占める比率は6割となっている(日本は2割未満)。
・要因は、①同国ではパソコンより先にスマホが広く普及し(13.8億人の人口のうちスマホ利用人口は7.53億人)、決済を含んだ日常生活で利用するサービスがスマホで提供されるようになったこと、②スマホの普及とQR決済の普及のタイミングが重なったこと、③中小事業者がQR決済の運営会社に支払う手数料はクレジットカードと比較して安価であり、店舗提示型(ユーザが店舗のQRコードをスマホで読み取る)では決済手数料が発生しないほか、消費者提示型(加盟店がユーザのQRコードを読み取る)でも0.6%程度(クレジットカードの決済手数料は中小企業であれば5%以上は少なくも発生)、④現金の安全性(偽札など)が低いこと が挙げられる。
・アリババグループの「Alipay(アリペイ/支付宝)」とテンセントの「WeChat Pay(ウィーチャットペイ/微信支付)」がQR決済の2大勢力であり、当初アリペイが先行していたが、広く普及していたチャットアプリ(Wechat)の既存ユーザの利用増加でウィーチャットペイがシェアを拡大している
飛騨信用組合のキャッシュレス決済の取組み
地域金融機関は金利の低下や人口減少などを背景に、収益機会は縮小傾向にある。
一方で、金融機関によっては生き残りをかけて先進的な取組みを行う金融機関も存在する。
今回は、キャッシュレス決済を起点に面白い取り組みを行う飛騨信用組合を紹介したい。
飛騨信用組合の概要
・信用組合とは、銀行と同じく預金・貸出業務を行う金融機関であるが、顧客(組合員)になるには企業規模が一定水準より小さいことや、所在地が信用組合と同じ地域であることなど、条件が設けられている。つまり、特定地域の事業者や住人(組合員)の間で、信用組合という組織を通じて、資金を融通しあうことを目的としている。
・業績について、企業規模をみると、預金は2,509億円と過去3年で7%増、貸出金は1,108億円と同じく過去3年で14%増と近年は業容を拡大しているほか、業績についても、継続的な収益力を示す経常利益でみると、近年は10億円前後で安定水位している。また、経営の安全性を示す自己資本比率で見ると、金融庁の示す基準である4%の4倍近くの16.31%を確保している。
さるぼぼコインについて
(概要)
・飛騨信用組合が金融機関として初めて運用する二次元コード決済の電子地域通貨である。
・導入目的として、飛騨・高山地域では、他の地域と同様、地元の人が地域外で消費をするようになり、地元の企業の収益機会が減少していた。そこで、地元の人が地元で消費できる仕組みとして、利用を地域に限定した電子地域通貨を導入した。
・システム基盤として、東京のITベンチャー、アイリッジが開発した「MoneyEasy(マネーイージー)」という電子地域通貨プラットホームを採用している。
・2017年12月からスタートしており、2018年8月時点で飛騨・高山地域の700の事業者で利用可能。同地域の企業数が6,073社なので、1割超で利用が見られている。また、さるぼぼコインの利用対象となりうる小売など消費産業でみると事業者数は1、709社なので、利用率は4割超と普及がかなり進んでいる。
(仕組み)
・利用者はスマホに「さるぼぼコイン」のアプリをダウンロードし、飛騨信用組合の本支店で、1円=1コインとしてチャージができる。
・店舗はQRコードを店内に掲示し、利用者はスマホで二次元コードを読み込み、金額をスマホに打ち込むだけで決済が完了する。
・店舗側のメリットとして、クレジットカード決済で必要となる専用の読取り端末が不要であり導入費用が発生しないほか、店舗が飛騨信用組合に支払う決済手数料は無料
・店舗は、支払いに使われたコインを預金口座に換金して入金できるほか、他の加盟店への送金にも利用することができる。
・ただし、コインを現金に換金する際に手数料が発生する他(払戻額の1割プラス500円)、他口座に送金する際には手数料が発生する。
・さるぼぼコインを導入できる店舗は、飛騨信用組合の営業エリアである高山市、飛騨市、白川村に限られる
・アプリには、加盟店の店舗情報やGPS機能を活用した地図の店舗案内も掲載されている。
・普及に向けて飛騨信組ではチャージ額に1%のプレミアムを付与するほか、3月にはチャージ額の上限を10万円から200万円にアップし、BtoB(企業間取引)にも利用しやすいようにする。
・飛騨信用組合は、2018年8月に、中国のアント フィナンシャル サービスグループが提供するモバイルおよびオンライン決済(QR決済)プラットフォーム「Alipay(支付宝:アリペイ)」 のアクワイアラ(加盟店開拓会社)として、加盟店の獲得と業務フォローを行うことを発表した。
・目的は、中国で広く普及する決済手段であるQR決済が利用できる環境を整備・推進し、地元企業の収益機会を増やすことで地域活性化を図ること。
・加盟店を増やし、「さるぼぼコイン」とAlipayの両決済が利用できるQR コードスタンドを、同地の店舗や観光施設などに設置する。
・QRコード決済を起点として、①地域通貨による地産地消の推進、②中国人観光客の消費促進といった取り組みは大変面白い。
・一方で課題も多いと見られる。①については、確かに利用が地域で限定されている地域通貨であれば、地域で消費をせざるを得ないが、あえて利用地域が限定されている地域通貨よりも現金を決済手段として保有するのが消費者心理ではないだろうか。むしろ、地元住民のQRコード決済比率を高める方向だけでなく、地域外の観光客もQRコード決済が可能になる仕組み作りを行い、地域通貨の決済高を増やすことを考えるべきではないか。
②については、確かに店舗提示によるQRコード決済は便利で店舗側の負担は少ないものの、①QRコートに偽のコードを貼り付けるといった不正の発生、②利用者が決済を行ったか、利用者のアプリを提示してもらい視認する必要があるが、仮に店舗来店者が多数の時は正確に店舗店員が確認できるか、といった問題に対応する必要がある。いずれも人手の問題であり、仮に中国人観光客が増加したときに対応できるだけの人員を確保できるか、といった課題に対応する必要がある。